ハルの読書と勉強録

読書の記録や勉強の覚書です。

【読書録】FACTFULNESS (ファクトフルネス)10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣/ ハンス・ロスリング,オーラ・ロスリング,アンナ・ロスリング・ロンランド

先日読了した、「FACTFULNESS(ファクトフルネス)10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣」の読書録です。

書籍の紹介

人が無意識のうちに陥りやすい「思い込み」を、WHO等の信頼性の高いデータや自身の研究データを基に正し、情報や世界を正しく見るための具体的な方法を述べています。「ファクト」を見る重要性を通して、今の私たちにある安らぎと希望を教えてくれます。謙虚に冷静に物事を捉え、考えることの大切さに気付かされる一冊です。

本書での学び

  • 考え方の「クセ」を知ることができた。
  • 自分の偏見に気づくことができた。
  • 情報の触れ方と、情報を正しく見せ・伝える方法のヒントを得ることができた。
  • 以前よりも自分自身と周りを一歩引いた視点で見れるようになった。
  • 様々な価値観や考え方を受け入れ、取り入れることの本当の意味を理解することができた。

私的まとめ

「思い込み」に気づき、事実を正しくとらえる

本書では、私たちが陥りやすい10の「思い込み」を「~本能」と題して紹介しています。

これらの本能は、私たちが生きるために必要である一方、情報や物事を誤って解釈する要因になり、誰もが悪意なく誤った形で情報を発信し、行動してしまう可能性があることが述べられています。

本書で紹介されている10の「思い込み」(本書目次より)

  • 分断本能
    • 「世界は分断されている」という思い込み
  • ネガティブ本能
    • 「世界はどんどん悪くなっている」という思い込み
  • 直線本能
    • 「世界の人口はひたすら増え続ける」という思い込み
  • 恐怖本能
    • 危険ではないことを、恐ろしいと考えてしまう思い込み
  • 過大視本能
    • 「目の前の数字が一番重要だ」という思い込み
  • パターン化本能
    • 「一つの例がすべてに当てはまる」という思い込み
  • 宿命本能
    • 「すべてはあらかじめ決まっている」という思い込み
  • 純化本能
    • 「世界は一つの切り口で理解できる」という思い込み
  • 犯人捜し本能
    • 「誰かを責めれば物事は解決する」という思い込み
  • 焦り本能
    • 「今すぐ手を打たないと大変なことになる」という思い込み

私たちはドラマチックに解釈しやすい

これらの「思い込み」が生じる一つの理由として、私たちは情報や物事をドラマチックに解釈する傾向があり、ドラマチックなものに惹かれやすいことが挙げられてます。

実際、ネガティブなもの(たとえ一時的でも)の方が耳に入りやすく、拡散しやすいですが、小さい進歩や良い事柄はニュースになりにくく、気づきにくいものです(例えば列車の安全運航など)。

日常より非日常に注目するし、ゆっくりと変わっていくものよりも新しいものや一時的なことに目が向いてしまう。

ハンス・ロスリング; オーラ・ロスリング; アンナ・ロスリング・ロンランド. FACTFULNESS(ファクトフルネス)10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣 . 日経BP社.

長期的には進歩が見られても、短期的に何度か後退するようであれば、その後退のほうが人々に気づかれやすい。

ハンス・ロスリング; オーラ・ロスリング; アンナ・ロスリング・ロンランド. FACTFULNESS(ファクトフルネス)10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣 . 日経BP社.

世界は少しづつであるが確実に良い方向に変わっていっている。文化や価値観は変化する。

ドラマチックなものやネガティブなもの、一時的なものに惹かれやすいため、私たちは知らぬ間に物事を分断したり、焦ったり、もう変わることはないと思い込んでしまうことがあります。

本書では、「上下だけを見ると格差は存在するように見えるが、実際は大多数の人々はその中間におり、分断は存在していない。年を重ねるごとに貧しい人々の生活は豊かになり、極度の貧困に苦しむ人々の数は減っている」という事実を、様々なデータとともに示し、解説しています。

補足

このような見方は、あくまで極度の貧困などの危機的状況にさらされていないことが前提となっています。危機的状況の渦中の人々に対し、「世の中は良くなっている」と伝えることは場違いであり、人として間違っていると述べられています。危機的状況下では、その時にできる限りの協力をすべきとされています。また、一時的に危機的状況になる可能性がある事象や、厳しい状況から脱することが困難な環境についても、その理由とともに紹介されています。

「悪い」と「良くなっている」を見分ける

「悪い」と「良くなっている」は両立する。「悪い」は現在の状態、「良くなっている」は変化の方向。

ハンス・ロスリング; オーラ・ロスリング; アンナ・ロスリング・ロンランド. FACTFULNESS(ファクトフルネス)10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣 . 日経BP社.

私たちがネガティブな思い込みにとらわれている際は、現状と変化を混在して捉えていることがあります。

引用の通り、「良い」「悪い」は現状であり、「良くなっている」「悪くなっている」は変化です。

「悪い」状態であれば、「良くなっていく」ように考えや行動を変化させていく人が大半だと思います。

毎回上手くいくわけではありませんし、思い通りの結果にたどり着くためには、時間がかかることが多いです。

つまり、今のままであることの方が難しく、短期的な変化は小さいことの方が多いのです。

このことは、世界共通で文化や価値観、境遇等が変わっていくことの根拠であると思います。

またそれは、時間や経験が人を変化(成長)させることを意味します。

ありのままの現状と変化を見分けるのと同時に、知識をアップデートし続け、小さい変化に気づき・認めることがいかに重要であるかを、ここから読み取ることができます。

鍵は「好奇心」を持ち、「謙虚」であること

私が最も大きな気付きを得たのが、本書で述べられている「好奇心」と「謙虚」の定義です。

偏見を持たず、誰であっても公平に接し、正しく事実を見極め、変化し続ける―――本書のエッセンスが、この部分に詰まっているように思えてなりません。

以下、引用です。

謙虚

謙虚であるということは、本能を抑えて事実を正しく見ることがどれほど難しいかに気づくこと だ。自分の知識が限られていることを認めることだ。堂々と「知りません」と言えることだ。 新しい事実を発見したら、喜んで意見を変えられることだ。

ハンス・ロスリング; オーラ・ロスリング; アンナ・ロスリング・ロンランド. FACTFULNESS(ファクトフルネス)10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣 . 日経BP社.

好奇心

好奇心があるということは、新しい情報を積極的に探し、受け入れるということだ。自分の考え に合わない事実を大切にし、その裏にある意味を理解しようと努めることだ。答えを間違っても恥とは思わず、間違いをきっかけに興味を持つことだ。「どうしてそんな事実も知らなかった んだろう?この間違いから何を学べるだろう?あの人たちはバカじゃないのに、どうしてこんな ことをしているんだろう」と考えてみることだ。

ハンス・ロスリング; オーラ・ロスリング; アンナ・ロスリング・ロンランド. FACTFULNESS(ファクトフルネス)10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣 . 日経BP社.

最後に

情報に対する触れ方や見せ方は、今とこれからを生きる上では大変重要な要素です。

インターネットは当然で、スマホSNSですらインフラ的な存在となりつつあり、私たちは何もせずとも情報過多になります。

それらから発せられる情報は、しばしば(良くも悪くも)感情と行動を動かされます。

情報を正しく選別して取り入れ、身を守り、自らの頭で考え、行動するための方法をこの書籍は教えてくれます。

そして、やはり根本は公平な人との関わり―――他者を認め、受け入れ、繋がることであることにも気づかされます。

この記事では紹介しておりませんが、具体的なデータの見方や限界、データの裏側を知ることの重要性等についても述べられており、私にとっては大変学びの多い1冊でした。

もしよろしければ、書店等で本書を探してみてください。

今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました。